今回は、2024年9月に発売されたホラー小説『口に関するアンケート』について、高校生でもわかりやすいようにたっぷりと解説していきます。この小説は少し不思議で変わった雰囲気を持っていますが、読み進めるうちに登場人物たちの変化や背景が徐々に明かされていき、読者自身の想像力をかき立てながら、だんだんと怖くなり、最後には深く考えさせられるような構成になっています。
他の本とは違う!この小説のユニークな特徴とは?
この作品を書いたのは「背筋生生(せすじなまなま)」というホラー作家で、これが3作目の小説になります。ジャンルは「モキュメンタリーホラー」と呼ばれ、フィクションでありながら、まるで本当にあったことを記録したような語り口が特徴です。
この小説の大きなポイントは、通常の文庫本よりもかなり小さなサイズで作られていて、60ページ程度と非常に短いこと。しかし、その短さとは裏腹に、読後の印象はとても重く、ページ数以上の恐怖とメッセージが込められています。
さらに、本のデザインや構成も独特で、文章の合間に意味深な空白や、章タイトルに奇妙な文字列が使われるなど、読むだけで不安な気持ちになるように、章の間に空白を設けたり、視線が引っかかるような文字間の演出が施されたりと、細部まで工夫されています。
タイトルが「録音ファイル」っぽい理由とは?
章ごとのタイトルには、「20119082623104a」など、一見意味がわからない文字列が並びます。これは、スマホなどで使われる音声データ(m4aファイル)を連想させるもので、物語そのものが誰かの録音記録のように展開されていきます。
この演出によって、読者はまるで誰かの会話をこっそりと盗み聞きしているような気持ちになります。会話の内容が曖昧で断片的であることが、その不気味さをさらに強調しています。その不気味さが、じわじわと恐怖を増幅させていくのです。
ラストの「アンケート」が意味するものとは?
この小説のクライマックスには、「アンケート」と呼ばれる仕掛けがあります。最初は読後感想のように見えますが、実際にはこのアンケートに答えることで物語の“真実”が明らかになるように作られています。
このアンケートに参加することで、読者自身が物語の一部となり、「この話は面白かったですか?」といった問いを通じて、登場人物の視点や背景をさらに深く理解できる構成になっているのです。ただ読むだけではなく、自分がその物語の中に入り込んでいくような感覚が生まれます。
呪われた木が呼び起こす恐怖の物語
物語は、ある心霊スポットにある“呪われた木”を見に行く6人の若者たちを中心に展開します。同級生の4人と、オカルト好きの2人がその木を訪れ、うち1人の女性が木に触れたことをきっかけに、徐々に奇妙な出来事が起こり始めます。
登場人物たちの詳しい性格や過去はあまり語られませんが、それが逆に読者の想像力をかき立てます。あえて説明を省くことで、読む人によって受け取り方が変わる作りになっているのです。
「口」が持つ意味を深掘りしてみよう
タイトルにもある「口」という言葉は、ただ話す、食べるという意味だけではありません。この作品では、「言えない気持ち」「心の奥にしまった感情」など、言葉にできない内面を象徴しているように思えます。たとえば作中では、登場人物が言葉を濁す場面が何度も登場し、その沈黙が逆に意味深なメッセージを持っていると感じさせられます。
ラストのアンケートに「口を出す」ことで、読者はその内面と向き合うことになります。この構造が、物語全体をより深く、そしてより不気味なものにしているのです。
あなた自身が語り出す番です
『口に関するアンケート』は、単なるホラー小説とは違い、読者が物語に関わるという点が最大の特徴です。読むだけで終わるのではなく、読後に「自分だったらどうするか?」と考えさせられるような仕掛けが散りばめられています。
言葉にしづらい恐怖や違和感、それを自分の中で整理していく過程そのものが、この作品の“怖さ”なのです。
ぜひこの本を読んで、あなた自身の「口」でこの物語を語ってみてください。そのとき、あなたの中にあった何かが、静かに目を覚ますかもしれません。
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